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ArKitypeのブログ

セガ信者なArKitypeがゲームとか趣味の話を書いてます COJ成分多め

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【SS】 月夜の如き少女 part3 【COJ】

月夜の如き少女 COJ SS

 瞬間の暗転。広がる光。 その周囲は現実と違わない、しかし決定的に違う世界。

 京極院沙夜はアクティスのサポートにより侵入のポイントへと送り込まれた。

「ふむ…アクティス。 侵入者はどこじゃ。」

 沙夜は端末越しに尋ねる。

 「侵入者はこの住宅の『蔵』に収蔵されている20世紀末の情報端末を狙っているようです。 先日、家主の方から蔵の中での奇怪な現象を報告されています。 おそらくアルカナ空間となにか関係があると思われます。 侵入者はそれをこの空間から強奪する試みのようです。 早急な対処を。エージェント京極院。」

 「相分かった。  蔵へと向かおう。」

 そして、歩を10メートル四方の大きさはあろうか、家よりも目立つ蔵へと進める沙夜。 なるほどそれは確かに『蔵』といった趣であり、情報端末よりも、陶磁器や彫刻のほうが収められていそうである。 しかし20世紀も今や昔、機械じかけも 骨董品になる時代である。 掛け軸や彫刻にまぎれて情報機器が合ってもおかしくはない。

 「む、扉が開かれておるの。 急ぐのじゃ。……!!……これは…」

 すこし足早に蔵へと駆け込む。蔵に踏み入ったその先で沙夜が目にしたのは、

 理路整然と並んだ棚に鎮座するゲーム機、テレビ、パソコン…どれも沙夜が見たことがない、相当年季の入ったものである。 掛け軸や彫刻にまぎれて、どころではない。 その蔵自体が巨大な機械であるかと思わせるほどに、そこは機械や端末でうめつくされていた。

 「…す、すごい量じゃ…彼奴は一体どれが狙いなのじゃ…」

 その圧倒的なまでの「情報量」に少々気圧される沙夜。 と、棚の影に何者かが隠れている気配を感じる。 おそらくあれが侵入者であろう。

 「そこの者。おとなしく出てきて投降するのじゃ。 いまならそれほどの罪には問われぬぞ。」

 沙夜が、呼びかける。 この口上でおとなしく出て来れば助かるのだが、そう簡単に行くわけもなく。

 「なんだ、怖い警備員かと思えばお嬢ちゃんじゃねえか。 心配させやがって。」

 片手に古めかしい段ボール箱を抱えた男が棚の影から姿を表した。 どうやら目的のものを見つけたようである。

 「そちはいま、人の者を奪おうとしておる。 見過ごすわけにはいかんのじゃ。やめるつもりはないのなら儂は情報管理局エージェントの権限をもってそちを拘束する。」

 「ああ…? 拘束ぅ…? あー…そういえばここはそういう世界何だったなー…」

 見るからに男は武装しているようではない。 最もこの空間では「情報」以外はなんの効力を持たないのだが。

 「こっちもな、目的があるんだ。 それなりに対処はできてるわけよ!」

 と、男がその目前に、沙夜には見覚えのある札束を出現させる。

「お主、儂と戦おうというか…!」

 沙夜も虚空から札束を出現させる。

「アクティス、ここで戦うのじゃ。準備は任せるのじゃ。」

『了解、戦闘フィールド展開……完了しました。』

 沙夜と男の周りを無数の文字列で構成された壁が覆う。

 「計画のためだ! 悪く思うなよ嬢ちゃん!」

と、男が一枚の札を光らせようとしたその時、その札が虚空へと消え失せた、

 「何ぃ!?」

 男は驚きを隠せない。 発動させようとした一枚はおろか、さらにもう一枚の札が消え失せてたのである。

 「こちらもこのような戦いは久々での、とりあえず毒を盛らせてもらったぞ。」

 どうやら、沙夜の方が一足早かったらしい。 彼女の目の前にはベッドに横たわる少女の映像、ではない。 少女が出現したのである。

 「やりやがったな…こっちも展開の準備が終わったとこだ! 出てこい!」

 と、男が投げ放つように札を発動させると、紫の豹が姿をあらわす。 と、瞬間紫の豹が「一段上書きされた。」

 「…なんだ…!?とりあえずこれで嬢ちゃんをボコボコにシてやるぜ!」

 男が「はやすぎる勝利宣言」をするやいなや。和服少女は静かに笑う。

「そちはまだ自分の愚かさに気づいておらんのじゃな…」

「なに…!?」

「月の剣じゃ」

 沙夜が唱えるが否や、豹の体が粒子となって崩れ落ちる。

「攻撃するぞ」

 男が驚く暇も与えず、ベッドの少女の「ベッド」が大口を開き、噛み付く。 その攻撃は障壁に阻まれるも、「何か」を削る。

「ついでにこれじゃ」

 沙夜が今度はバイクに跨る大鎌使いを呼び出す。

 『現在、コードの実行中、しばらくお待ち下さい』

 攻撃を指令しようとするも、アクティスに制止される。

「むう…はやく終わらせたいのじゃ…」

 沙夜がむっつり頬をふくらませる。

「なめやがって…! これでどうだ!」

 男が次に呼び出したのは木々の生い茂る巨人。主を守らんとばかりの巨体である。

「厄介じゃのう…しかしこれでどうじゃ。」

と、沙夜が次に呼び出したのは、帽子をかぶったカラス。これではとても巨人を打ち倒せるようには見えない、が

「カラスが龍に変身するのじゃ」

突如、カラスの体を光が包んだかと思うと光から出現したのは、先ほどの姿とはまるで異なる、青い龍。

 龍の咆哮が稲妻をほとばしらせたかと思った瞬間、巨人が先の表のように崩れ落ちた。

「な…!?」
「どうやらこれで4つじゃな」

バイク乗りと、少女と、龍が同時に襲いかかる。男は為す術もなく攻撃にさらされる。

「うおおおおお…!!…まだだ!」

 しかししぶとい。 男は負けを認めていない。

「おれは計画のためにあの方にすべてを捧げたんだ!失敗はできないんだあああ!」

 男が唸るとともに呼び出したのは、機械の体の象。体の所々を緑のラインが走っている。

「失敗はできない失敗は…できない…失敗は…」

 男がひたすら唱えるようにつぶやく。 男もまた、大きな重圧を背負ってこの盗みを働いたようだ。だが、それで許されるわけではない。少女の「正義」はそれを許さない。

「じゃったら、もっとマシな手立てを考えるのじゃったな。善行をかさねれば報われるやもしれなかったのにのう」

 そして現れたのは青い炎に包まれた神獣。 神獣の嘶きとともに象が消え失せる。

「これでしまいじゃ、悪党よ。」

 再び攻撃が一閃、二閃、そして三閃。

 「うおおおおお…!」

男の体が揺らぐ。そして、この空間から消え失せる。

『目標、強制排除完了しました。任務完了です。』

アクティスが報告を告げる。

「ふう…やはりエージェント同士の演習と違って御しやすいのう。」

 この戦いもそうだが、基本的にこの空間へ悪事を働きに来たものは、大概がこの世界の「プログラム」の戦い方を把握できていない。 できていても仲間との鍛錬を重ねた沙夜には毛ほどもかなわない。

「ともあれ、任務は終了じゃろ?儂はもう戻りたいのじゃ」

『了解しました。アクセスシークエンスを終了します。』

アクティスの言葉が終わると同時に、沙夜の視界が暗転する。

そして、視界がもどると、そこはもといた玄関だった。

「ふう…おわったのじゃ」

 夕日が差し込む中、沙夜が一息ついていると、

「沙夜、そんなとこでなにしてるの?」

 夕飯の支度をしていた母親が沙夜に気づいて尋ねてきた。

 たしかに、何もせずに玄関に立ち尽くしてるさまは奇妙そのものである。

「いや、すこしぼーっとしておったのじゃ。なにもないのじゃ母上」

「もう、暖かくなったからってうっかりしてると風邪を引くわよ。もうちょっとで晩御飯できるから部屋で待ってなさい。」

「はいなのじゃ」

 沙夜は快く返事をし、部屋に戻る。そして、そこにはいつもの様にミイラくん人形が鎮座している。

 「ただいまなのじゃ、ミイラくん。」

 そうして、エージェントは元の中学生に戻る。 彼女の日常が今日も終わろうとしていた。