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ArKitypeのブログ

セガ信者なArKitypeがゲームとか趣味の話を書いてます COJ成分多め

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【SS】 月夜の如き少女 part4 ”珍獣の魅惑 前編” 【COJ】

 某日。 エージェント七名による作戦会議が行われた。 議題は「アルカナ空間で頻発する自律プログラムの以異常発生の対処」だった。 ここ最近、アルカナのユニットコード、とりわけ珍獣と種別されるユニットが一度に多数出現し、自律行動をとっているとのことである。 もともとユニットたちはこのアルカナに捨て置かれた住人であり、普通にある程度の数は空間内で気ままに過ごしているのだが、この度の異常発生は数が違う。

 いっときは空間を歪ませる可能性があるほどの数が出現したとの報告がある。

「なるほど、それで今日が統計的に異常発生する確率が高いと。」

 報告書を一瞥し、アクティスに問いかけるのは東京に居を構える私立探偵、緋神 仁。

 「死神」の名を冠し難事件をバリバリ解決する全国的有名人…というわけでも無く、地元で有名な探偵さんという感じの人物である。

『はい。 発生するユニットの数も回数を重ねるごとに増加していっています。 各員、対処には細心の注意を。』

「珍獣に圧殺だなんてろくな話じゃないな。 全く数の暴力とは恐ろしいもんだ。」

 かつての身の上話のように話すのは元自衛隊という経歴を持つアフロ中年、山城 軍司。 自身もエージェント活動中に大量の珍獣ユニットを使う侵入者に首の皮一枚というところまで追い詰められたこともあり、珍獣にはあまりいい思い出は持っていないようだ。

「えー、おじさん珍獣怖いのー?だっらしないなー!」

そんな軍司を小馬鹿にするように笑うのは高校生エージェント、鈴森まりね。 おもちゃの銃を片手に高校生の傍ら、エージェントとしてめまぐるしく活動している。 彼女の経歴からか、非常に献身的な面があり、おどけた言動が目立つ中、その行動は人のために尽くされている当たり、沙夜同様「よくできた子」である。

 「うるせえ!大体俺は嬢ちゃんみたいにファンシーなもんは合わねえんだよ!フン!」

 意気がる軍司。そんな態度が面白いのか、まりねは構わず軍司にちょっかいをかける。

(まったく、アフロが嫌いとか言っときながら構うあたりあまのじゃくなのかねえ…)

 ギターケースを背負い、そんなことを考えているのは夢見るミュージシャン、星光平。 都内のクラブでそこそこの人気のバンドをギターボーカルを務めており、夢の階段をかけあがる最中、エージェントととして誘われたというわけだ。

 アルカナの真実を知る中、大切な義妹の身を案じ「大切な人」を守るため、その任を請け負ったのである。 その働きぶりは、仁曰く「まさに優しいお兄さん」だそうだ。

「それで…今日は全員でこれに当たれってワケ?」

面倒くさそうにぼやくのはハッカーとして名を馳せる少年、黒野時矢。 自らのハッキング技術が及ばない世界であるアルカナに興味を持ち、その新たなるネットワークの解明を暇つぶしとうそぶきつつも本人は割りとこの仕事に満足しているようだ。

「時矢くんは中国地方の人でしたっけ?そちらもがんばってくださいね!」

「言われるまでも無いさ。そっちこそヘボな失敗なんかしないでよね。」

「もうっ、また年上の人をバカにして!」

「僕のほうが優秀なのは事実だからしようがないじゃないか」

 「ほらほら、そこまでじゃ。 議題が進まぬぞ。」

 のらりくらりと応答する時矢に若干お冠なのが御巫 綾花。 彼女がこの7人のエージェントのスカウトマンであり、この中では最もアルカナに精通していた人物…だったのだが最近は時矢の目醒しい学習能力が彼女を上回っているようだ。

 「それで、その大量のユニットの出現にはなにか兆候とかあるわけ?」

『はい。 基本的には、多数の珍獣ユニットが出現した場所には子供の声のようなノイズが聞こえるとの報告が仁さんから来ています。』

「ああ、この前アルカナを見まわっていたら公園で子供の声みたいなのがきこえてまさか空間に攫われた子がいるかとおもったらそこにはハッパロイドが2,30は群がっていやがった。 あんな人形みたいな見た目でも集まれば軽くホラーだぜ。」

「なるほどね…襲いかかったりはしないの?」

『数名、異常発生に立ち会った報告がありますが、発生後、群がるだけで敵意はいずれもなかった、とのことです。』

「ああ…上から落っこちてきた時は流石に危ないと思ったがな。」

と、軍司。

「でもあの子達、なんか柔らかそうじゃない? あたっても痛くなさそうじゃない?」

「圧殺、はありえるかのう…」

「うえ、沙夜ちゃんそんな怖いこと言わないでよー」

「とにかく、注意は怠らないようにすべきじゃな。 儂も心してかかろう」

『私からも通達は異以上です。各員、任務にあたってください。』

 そう言い、7人の目の前から消え失せるアクティス。

「それじゃ、俺達も動くとするか。」

 人の言葉を皮切りに、各自、担当のアルカナ空間へと戻っていく。

 エージェント総出の、珍獣対策任務が始まった。

***

「今日でるとは聞いたがそんな気配は微塵もないのう… 」

 任務開始から約二時間。 京極院沙夜は暇だった。

「まりねよ。そちらはなにかあったかの?」

 端末で、まりねに問いかけてみるも、

 『ぜーんぜん。 いつもいるような子たちばっかりで大群なんて全然だよ。』

「儂もじゃ。 カラスは数羽とんでいたがほかはサッパリじゃ。」

ちなみに今は沙夜が腰掛けるベンチの隣の街灯で1羽、「アホー」とおなじみの鳴き声でしきりに鳴いている。 帽子がなければ太ったカラスにしか見えないだろう。

『まあ、このまま終わってくれれば楽だしねー。わたしはちょっと見てみたいかなー。』

「一度サングラスをかけた犬の珍獣がたむろしているのを見たが余り良い見た目ではなかったぞ…」

『まあ経験は大事じゃない?』

「あれを全員制御できたとして経験といっていいのかのう…?……む」

『どうしたの沙夜ちゃん?』

 沙夜の訝しげな反応を感じ取ったまりね。 どうやら何かを発見したようだ。

「カラスが10羽はいたかの。 寺の方へ向かっていった。今から追うのじゃ」

  視線の先には10数羽はいようか。カラスマドウの一群が三角形の陣形で、飛び去っていった。

「お、そっちに出ちゃったー? 気をつけてねー。」

「お主も、用心するのじゃ。」

 そう言い、通信を切る沙夜。端末を懐にしまい、カラスが飛び去った方へを歩き出す。

 「いったいなにが原因なのかのう…」
 すこし足早に歩きつつ、原因を思案する。

 沙夜には見当もつかなかったが、そうこうしているうちに、目的の寺へとたどり着いた。

 南大門をくぐり、境内を見回す。 飛鳥寺形式の古い寺なのか、本堂の前に町並みに溶け込む大きさの小ぶりの塔と金堂が並び建っていた。

 「カラスはどこに逃げ込んだかのう…」

 どこから手をつけるか悩んでいると、塔の最上段から10数羽のカラスマドウが地上へと降り立ち、不意に奇妙なステップを踏み始めた。 さながら、運動会のフォークダンスのようである。

 「どうすればいいのかのう…」

 考えこむ沙夜。 暴走ユニットと違い、悪行は働いてないため、以前にでくわしたときも対処に悩んだのである。

「しようがないの。 すこし殺生じゃが…」

インターセプト、『弱肉強食』じゃ。」

「「「「「アホー!」」」」」

 カラスの悲しげな声が合唱する。 数秒後、カラスたちはその場から姿を消していた。

『おい、沙夜。仁だ。まりねから聞いたが大丈夫か?』

「問題ない。少し可哀想じゃが弱肉でまとめて対処したのじゃ。」

「おお…そうか。っなんだ?アクティスから各位だと?」

と、沙夜たちの通信に割り込み、アクティスから通信が入る。

『アルカナ空間地中に大きな空間の歪みが発生。各位、注意、厳。』

「なんなのじゃ…?」

そのとき、子供の笑い声がしたかと思うと、沙夜の立つ地面がグラリと振動した。

「どうやら儂が、あたりのようじゃ。来る。」

 塔と金堂の間の石畳が隆起するかのように歪む。

『お、おい、大丈夫なのか?』

「そんなに軟ではおらん。任せと…く…」

『どうした!? 何があった?』

 歪んだ空間から、姿を表したのは…

「こ、これは…」

 大量、数は100を越えようかという、

 ミイラくんであった。

「て、天国なのじゃ…」

思わず小走りに駆け寄る沙夜。そして、

「全員持ち帰るのじゃ!」

 普段おとなしい少女とは思えぬ、爛々と輝いた目で、両腕からあふれんばかりのミイラくんをだきかかえ、くるくると回る。 そのさまは、まさに狂喜乱舞。今の彼女を止めれるものはいるだろうか。

「あーアクティス。どうやら沙夜が緊急…?なのか?とにかく普通の状態じゃない。 こっちもバク・ダルマンが10数匹でてきて手が離せん。 だれか対応にあたってやれ。」

『了解。 エージェント山城を派遣します。』

 アクティスが言い残し、通信が切れる。

仁は、素早い手さばきでカードを呼び起こし、発動。インターセプト、『火気厳禁』がバク・ダルマンたちを跡形もなく消し去った。

「あいつ、ミイラくんがそんなに好きなのか…」

西の傾いた太陽が輝く方向を向き、ぼそりとつぶやいた。

 

 

後編へ続く。