ArKitypeのブログ

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【SS】 月夜の如き少女 part5 ”珍獣の魅惑 後編” 【COJ】

「ここは天国なのじゃ…」

 飛び込んできた沙夜にてんやわんやなミイラくんの集団にお構いなくなでたり高い高いしたり抱きかかえたり。 もはや、やりたい放題のエージェントであった。

 「…で、俺がお嬢ちゃんをなんとかしろと…」

 その光景を見てげんなりしているのはその沙夜を止めるために呼ばれた軍司だった。

「しかしどうすりゃいいんだ…とりあえずバトルフィールドを展開しとかねえと…」

 どうやらミイラくん軍団は既に「沙夜のコントロール下のユニット」状態なのか、沙夜を相手取ってバトルフィールドを展開すると、沙夜のフィールドには数え切れないミイラくんが。

 「どうやって5体以上並んでるんだこれは…」

 エージェント同士での模擬戦闘や、エージェントを模ったアルカナ空間の「不審者」との戦闘の時には、ユニットやインターセプトの各種プログラムの暴走を招かないよう、ユニットは5体までしか展開できないようになっているのだが、そんなことは露知らずと言わんばかりにミイラくん軍団が一体ずつユニットとして展開されている。

 「とりあえず襲い掛かられるのも厄介だしな…」

 保険用にキャットムルを展開しておく軍司。 ひとまず、これでミイラくんに襲われる心配は無いだろう。

 しかし、当事者の沙夜は、軍司の方には見向きもせず、ミイラくんと戯れている。

「あー…これどうすればいいんだ…」

 いつもどおりのバトルフィールドのため、こちらから攻撃することはできる。しかし相手は無数のミイラくん。 うかつに動けばフィールドが不具合をきたすかもしれない。 いや、既にこの状況が不具合でもあるのだが。

「おーい、お嬢ちゃーん…」

 あまりにも幸せそうな顔をしている沙夜の手前、いつもの力強い声色で声をかけれない軍司。 どうやら、彼女の耳に届いたらしく沙夜が振り向いた。

「む、軍司か。 儂は今忙しいのじゃ。用があるなら後にするのじゃ。」

と、言うが早いかまたミイラくんと戯れだす沙夜。 これでは埒が明かない。

「俺達はそのミイラくんが異常発生だから対処に来たんだが、どうするんだー…」

 相変わらず力の入ってない声で問うと、

「全員持ち帰るのじゃ!」

「ええー…」

  途方も無い無理強いを今ならしかねない。 今の沙夜は駄々っ子同然である。

 「おい時矢ー。お前トシ一番近いだろー。お前こういう時どうすんだ?」

 たまらず、時矢に通信で助けを請うた。

『んなこと僕に言われたってしらないよ! 僕だって女子とはそんな付き合いないしそもそもあいつは何もかもが普通の範疇じゃあないじゃないか!』

 全く頼りにならなかった。むしろちょっと不憫に思えた。

「…あー、すまんな。 お前も大変なんだな…」

『っ何だよその憐れむようなセリフは! そっちから聞いておいてなん』

 喚きだしたのでたまらず通信を切った。

「ホントどうすればいいんだこれ…いや待てよ…いまの状況なら」

 軍司が途方にくれていると、ふと1つの案を思いついた。

 成功するかはわからない。だが今の沙夜は自分には手に負えない。もうこれしかないだろう。

「おい、アクティス。 今展開してるフィールドを中断することはできるのか?」

 するとアクティスは、

『フィールドは基本は中断は出来ません。現在山城さんが展開してるのは模擬戦闘用フィールドですので、試合に決着が付くか、不慮の事故が発生しない限りフィールドは展開し続けます。』

「じゃあもう一つ聞いていいか。 決着がついたらフィールドの状況はどうなるんだ?」

『その場合は、各エージェントの所持しているユニットプログラムは破壊処理となり、展開しているトリガー、インターセプトも破壊処理されます。』

「ようし分かった。ありがとよ!」

 どうやら何とかなりそうだ。沙夜には後で怒られそうだがそれぐらいなら甘んじて受けよう。

「嬢ちゃんにキツイ目線で叱られるのもわるくはねえな…」

そんな不埒なことを考えながら、男、山城軍司は行動にでる。

「サレンダーだ!」

そう宣言すると共に、自身のモニタに敗北の通告がでる。そして、

 すべてのユニットが姿を消した。

「な、なんなのじゃ…!」

 軍司のことは眼中になかった沙夜。突然消え去ったミイラくんに驚きを隠せない。

「やれやれ…やっとカタが付いたぜ…」

ひとまず、目の前の脅威は姿をけした。端末にもミイラくんの一斉処理によるバグなどの問題はなさそうだ。

他の自律ユニットが出現してないことを確認し、踵を返そうとしたとき、コートの裾を何者かに引っ張られる。 引っ張ったのは軍司の予想通りの人物だった。

「…どうしたんだよお嬢ちゃん? 任務は終わったぞ?」

 素知らぬふりをして話す。 沙夜の方は見なくてもわかる。相当お怒りのようだ。

「ミイラくんを…儂の天国を元に戻すのじゃ!」

と、震えた声で涙目ながら細い腕で軍司をぽかぽかと叩きだした。鍛え抜かれた肉体には痛くもないし、むしろこれは一種のご褒美なのではないかとまた横道にそれたことを考えだした軍司だった。

その時、考えが顔に出ていたのだろうか。沙夜が軍司から一歩後ずさりし、険悪な目になった。

「なにか、いかがわしげなことを考えてそうじゃのう…」

「いんや、何も?」

 やはり、美少女なだけあって、何をされてもそんなに悪い気にはならない軍司。 このままとぼけていても何も害はないだろう。

「まー了承もなくミイラくんを消しちまったとは悪かったなあ嬢ちゃん。今度ぬいぐるみでも買ってやるからそれで手を打たないか?な?」

 しかし、流石にこのまま年端もいかない子供を悲しませるのもバツが悪いので妥協案を提案する。すると、

「まったくしょうがないやつじゃ… 今回くらいは多めに見てやろう…」

ずいぶんと上機嫌な声で許してもらえたのだった。

(やれやれ、純真なのかわがままなのかわかんねえな…)

 自身からはとうの昔に消え去った無垢さを目の当たりにし、なんとも言えない気分になる軍司だった。

 

***

その日の夜、報告も済み、解散(と言っても通信でのことだが)となり帰宅した沙夜。

 大群のミイラくんともっと遊んでいられなかったのは残念だったが、軍司との約束は取り付けて、少々ごきげんだった。

 いつもの様に部屋に戻るなりミイラくんに抱きつく。

「仲間がふえるぞミイラくん…うれしいのう…」

 幸せそうな顔で、そのまま眠りに落ちていったのだった。