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ArKitypeのブログ

セガ信者なArKitypeがゲームとか趣味の話を書いてます COJ成分多め

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【COJ】 月夜の如き少女 part6 "現実とアルカナを交錯するアフロ" 【二次小説】

 珍獣の異常発生騒動から数日が経った日曜日。 京極院沙夜はとなり町の大型モールでショッピングをしていた……山城軍司と一緒に。

 先日の騒動での口約束を現実にするため、半ば無理矢理な形でこの旧都の街にまで引っ張りだされたのである。

「かの空間を使うと東京からここまでの移動も楽にすんでいいのう。 情報とはげに恐ろしきものじゃ……」

 軍司を殿にし、モール内をいつもの和服で闊歩する沙夜。 やはり周囲はその異様かつ優雅な光景に目を奪われてしまう。 その上今回は後ろに、アフロの大柄な男がついているため、異様さに拍車がかかっていた。。 その光景だけを切り取れば軍司が怪しい人物にも見えなくはない。 ……実際怪しいところが多々あるのだが。

「俺はむしろあんな未知の代物を移動用に活用しちまうお嬢ちゃんが恐ろしいぜ……」

ミイラくんのこととなると途端に行動力が違う彼女に軍司も流石に辟易である。 しかし付き従っている当たり女好きの性だろうか。

 実際、彼らエージェントが守り監視する「アルカナ」は恐ろしいものである。 すべてのものが「情報」としてしか存在できない、つまり生物だろうが無機物だろうがなんであろうと「実体がない」状態になるのである。 アルカナ空間内では仮想的に現実と瓜二つの世界が存在するが、その実は情報。 たしかに、現実もまた拡大解釈すれば物質や生物、星や宇宙という「事象を構成する情報」の集合体の情報空間、そう捉えれる。 が、このアルカナの場合、電脳的な情報、簡単にいえば0と1の組み合わせで成立している世界なのである。 それでいて、現実と瓜二つであまつさえ出入りが可能である。 つまりどうなるのか。 

 今回、軍司が東京からここ、京都までわずか15分という時間で到達できたのはこのような経緯がある。

 まず、軍司がアルカナ空間にアクセスする。 この時点で軍司の現実世界の「情報」はアルカナ空間へと移動する。  現実の肉体は、アルカナ内の軍司の「情報」の中のパラメータの1つとして保存される。 いわばこのときの軍司は開発キットで作成した3D格闘ゲームのモデルをステージに出現させて、モーションやボイスデータ、攻撃力や体力のパラメータだけを残してポリゴンの骨組みを取っ払ってしまったような状態である。

 このとき、「肉体」の情報は「アルカナ空間内での軍司を形作るパラメータ」として、アルカナ内の軍司の姿を作り上げる。ゲームのアバターのようなものといえばわかりやすいだろう。

 そして、「アルカナ空間」は情報である。 情報管理局の研究の成果により、現実からの介入も可能であり、それらを利用した悪事を防ぐのがエージェントである。

 ここで、現実側から、軍司の「座標」の情報を変更する。 変更先は、京都の譲歩王管理局支局。

 もう分かるだろうか。 あとは軍司の「情報」をアルカナから現実に戻すだけである。

 そうすれば、15分前まで東京の自宅でごろ寝をしていた山城軍司は、数百km離れた京都まで移動したことになる。 

 東京から京都、直線距離にして368km。 これを15分で移動するには時速にして、1472km/h、秒速ならば約409m/h。ジェット戦闘機でも使わなければ到底成し得ない速度で移動したことになる。

 現実で行えば、大事である。 しかし、アルカナ空間では、軍司の「座標」が変更されただけであり、そこに超音速の移動やそれによるソニックブームは存在しない。

 たったこれだけの「移動」だがこれが実用化されれば、いや公になるだけで世界経済や文明に革命が起こりかねない。 だからこそエージェントがあり、このアルカナを個の利益のために使われないように日々沙夜たちが任務にあたっているのである。

 ……そして、沙夜は今回、新しいミイラくん人形を買ってもらうためにアルカナ空間を使うに至ったのである。 無論、職権濫用と言われればそれまでなのだが……

 このことを管理局から指摘されないか軍司が沙夜に尋ねたところ。

「大丈夫じゃ。 アクティスが研究部の輩に連絡してお主を実験の被験体扱いにしたそうじゃ。 だから今おぬしがここにいるのも実験の検証の一環ということになっておろう。」

 沙夜が上機嫌な口調でさらっと怖いことを言い、軍司の疑問を一蹴する。 ミイラくんがもらえるのが待ちきれないのだろうか、いつもは真一文字に結ばれた口も少し笑みを隠しきれていない。

「あのねーちゃん、んなことまで出来るのか…」

 軍司からすればたかがミイラくんのためにここまでする沙夜も沙夜だが、それを否とせずむしろ協力するアクティスと研究部もまたそうである。 かつて彼が所属していた自衛隊ではまず見れないような業務形態である。

 (組織もなんでも若いってのはおそろしいもんだぜ…)

 内心そんなことを考えながら、沙夜のあとをついていくと、どうやら目的の場所へたどり着いたようである。

 「TOYGY∀URUS」という名前の全国チェーンの玩具店である。 幼児向け知育玩具から、学生向けのカードゲーム、電子ピアノやロボピッチャなど、ありとあらゆる「遊び」の道具を揃えた有名店。 沙夜も大概はこの店でミイラくんグッズを購入していた。

 「軍司よ、参るぞ。」

 そう言うが早いか、迷いのない歩みで、膨大な数の商品が並べられた商品棚の間を縫っていく沙夜。 その小さな体を相まってか。あっという間に軍司との距離が離れてしまう。

 対して軍司といえば大柄。 休日で混雑した店内を移動するのも一苦労である。

 しかも運の悪いことに、最近巷で人気のマスコットの着ぐるみが来店しているらしく、店内の混雑はピークを迎えていた。 それを難なくすり抜ける沙夜。 今にも見失いそうな軍司。

 このままでは自分が迷子になりかねない。大人としてそれだけは避けたい。 そんな焦りの中、自衛隊時代に鍛えた観察眼でなんとか沙夜を見つけ必死に人混みをかき分け、ようやく沙夜の元まで辿り着いた。

「遅いのじゃ、軍司。 そんなのでよく樹海の訓練を制覇できたのう。」

 確かに、樹海での訓練はあったがそれでも人混みの中の訓練はなかったぞ…と内心ぼやきながら軍司少々荒くなった息を整えた。

「ハァ……で、ここが嬢ちゃんの目当ての場所なのか?」

「そうじゃ、ミイラくんはこのぬいぐるみコーナーにたくさんあるのじゃ。 品定めをするからしばらく待っておれ。」

 気遣いか、ひとりで集中したいのか。真相は分からないが軍司に「待て」を言い渡した沙夜だったが、

「いや、そうだな。 ここは後学のために嬢ちゃんに人形選びを教えてもらうか。」

 沙夜のあとをついていくことにした軍司だが、それを沙夜は半目で見つめる。

「な…なんだよ嬢ちゃん、そんな疑うような目をして。」

 内心を見透かされたような気がして軍司の額から冷や汗が一筋流れる。

「……いや、どうせお主のことだからまたそこらのおなごの気を引くために儂に教えてもらおうという魂胆なのじゃろうと、邪推しただけじゃ。 違ったらすまなっかったの。」

 見事に図星である。 もうおっさんな軍司にはいまどきの女子の流行りなど到底わからず、沙夜の人形選びに付き合うことで流行を知ってナンパに使おうと考えた矢先である。

「まあ好きにするが良い……代金はきっちりお主の持ち分なのはわすれるでないぞ。」

 そう念を押し、目当てのミイラくん探しを再開する沙夜。 しようのない軍司は少し離れて陳列されたぬいぐるみたちを眺めるくらいしか出来なかった。

 そして10数分かしたころ。 軍司が人形を人形を眺めているのにも飽き始めていた頃、

ちょうど軍司と棚を挟んで反対側にいた沙夜が、彼女の上半身ほどの大きさはあろうかという人形を抱えて戻ってきた。 その大きさに思わず軍司もぎょっとする。

「これじゃ。今日はこの『マミーちゃん』を買うのじゃ、軍司よ。」

「や、やけにデカイじゃねえか…でもこれ、ミイラくんと違うんじゃねえのか?」

 確かにその人形は姿形は似ているが、リボンを付け、包帯がピンク色で、先日みたミイラくんとは違うようである。 すると、

「この子はミイラくんのガールフレンドじゃ。 この子がいれば儂が部屋を離れてもミイラくんが寂しくないじゃろう。」

 ミイラくんが寂しいどうこうより、これと同じくらいの人形を更に持っているのを言葉から読み取った軍司は、そのサイズ人形が2体鎮座する女子中学生の部屋を想像してみたがどう考えてもそれはもはや沙夜の部屋でもなく「ミイラくんたちの部屋」にしか思えなかった。 思わず吹き出しそうになるが、なんとかこらえる。

「よし、分かったぜ。 で、その子はいくらなんだ?」

「7000円じゃ」

 即答された金額に思わず耳を疑う軍司。 しかし値札には7000円の文字が。

(人形ってなんでこんな高いんだ…!)

 そんな感想を胸中で叫びつつ、泣く泣く財布から代金を支払い、二人は店の外へと出た。

「約束通り、この子はもらうのじゃ。 感謝するぞ、軍司。」

「……おう、嬢ちゃんが喜ぶならそれでいいぜ……」

 軍司は予想外の出費に動揺を隠せず、レシートに打たれた「¥7000」をぼんやりと見つめていた。

 「さて、これで先の約束は果たされたわけじゃが…」

 うつろに聞いていた沙夜が言葉を途切れさせたの気付き、顔を上げると、沙夜はなにやら喜びと戸惑いの入り混じった表情をしていて、そして一拍おいたかと思うと、

「ありがとうなのじゃ……」

 と、いつもの凛々しさがなり照れくさい声でそういったのだった。

 今までこのような沙夜を見たことがなかった軍司は面食らう。

 そして、

「ではさらばじゃ! 儂は家に帰る。 お主も帰り路は気をつけるのじゃぞ!」

 そう言って、いつもより足早に駅の方角へと歩き去ってしまった。

 10秒たらずの出来事をうまく飲み込めていなかった軍司だったが、ようやく状況を理解し、我に返る。 そして

(いいことをするっていいな…!)

 美少女の中学生に(おそらく)心からのお礼を言われた。 それだけで、7000円の出費は記憶の彼方へと飛び去っていった。

 「さあて、帰るとするか!」

 上機嫌に、元来た管理局支局へと向かう軍司。 そして、行きと同じようにアルカナを通して東京へともどるのであった。

 

 

余談だが、この件で行われた、アルカナ空間を通し現実情報の座標移動、つまり軍司の東京から京都への移動は貴重なデータサンプルとして、のちの研究に、大きく役立ったそうである。

 

 

 

 

 

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